【完】傷だらけのプロポーズ

人の家に上がり込んで全く悪びれない態度を取るこの男は、朝比奈 夏樹(ナツキ)という。

私のマンションの隣人で、中学時代からの同級生。

いや、中学どころか高校や大学まで一緒で、挙句の果てには就職先まで一緒といういわゆる腐れ縁だ。


朝比奈は大学を卒業して、私の勤務先である東日(ヒガシニチ)百貨店に営業として入った。 カリスマバイヤーと呼ばれ、現在は外商の仕事をしている。
そして家族以外で現在私の秘密を知るたった一人の他人でもある。

『お前って超ブスだよな』 中学の時に初めて出会った時に朝比奈に言われた言葉である。今でも忘れられない程には恨んでいる。

出会ってから15年以上。シンデレラの姉のように私は朝比奈にいびられ続けた。

ブスだと言って率先して私を苛め抜く彼のお陰で、周りからはいつだって同情された。 それでも朝比奈は私をいじめ続けるのを止めなかった。

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