【完】傷だらけのプロポーズ

「美麻ちゃんは一人暮らしし始めてからずっとあのマンションなの?」

「ええ、2年契約でそのうち出て行こうと思っていたんですけど、ズルズルと結局あのマンションに…」

今までだってずっとあのマンションを出て行って、別の場所で暮らすきっかけはいくらだってあったはずだ。

大学を卒業して、母親が決めた物件。 朝比奈の母親と結託して勝手に決められた場所。

私だって、朝比奈だって、もう大人だから自分で自分の住む場所は決めれる。 それでもお互いにあのマンションを出て行くとは口にしなかった。


なんだかんだ居心地が良かったのだ。 何かあれば横に朝比奈が住んでいて、何がなくとも何となく一緒に居る事が。

もうおしまいにしなくてはいけないと分かりながらも、もう6年もあのマンションで暮らしている。

「考えておいてよ、俺と暮らす事も」

「それはもう…勿論…」

「今度一緒の休日に不動産会社に行くのもいいね。
俺はこのマンションは結構気に入ってるんだけど、二人で暮らすには狭すぎるし。
あー…でもそうなったら同棲するって事だから美麻ちゃんの両親にも挨拶しにいかなくっちゃね」

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