【完】傷だらけのプロポーズ
朝比奈も一言言ってくれればいいのに…。 今まで曖昧にしていたけれど、こうやって二人で結城社長のパーティーに来ている姿を見ると、本当に付き合っているんだなあと感じてしまう。
「美麻ちゃん、挨拶は後にしてちょっと俺話して来たい人がいるんだけど、いいかな?」
「あ、全然。私の事はお構いなく…」
「ごめんね。母さんの個人的なホームパーティーとはいえ、仕事で関わってる人が多くて。
もし良かったら美麻ちゃんも一緒に…」
「私の事は全然気にしなくていいんです。大河さん行ってきて?」
「本当にごめん。直ぐに戻ってくるからね」
そうだよね。
大河さんや朝比奈にとっては、こういった場も仕事になるのだろう。
テーブルの上にはケータリングされたご馳走が並ぶ。
…それにしてもお金の匂いがする人間ってどうしてこんなに胡散臭いのだろう。
やたらと派手ないで立ちをした人間が集まる華やかな空間の中で、どこか居場所がなくてシャンパンのグラスを手にしたまま端っこに寄って壁に寄りかかる。