【完】傷だらけのプロポーズ
「アハハ、すいません。 彼女たち、中々離してくれなくって。
どう?美麻ちゃん楽しんでいる?」
大河さんの言葉に曖昧な笑顔を浮かべて頷く。
楽しめるわけがない。 自分とは違う世界の人達がいて、その上朝比奈と真澄ちゃんまで居る空間。
出来るだけ早く時間が経って終わりを迎える事ばかり考えていた。
結城社長とお話をして、その後は大河さんは常に隣に居てくれた。 しかし隣に居てくれれば居てくれるほど居心地が悪くなっていく。
どうしても若い女性から注目されてしまうのは、私みたいな普通の女が彼の隣を陣取っていたせいだろう。
鋭い視線が痛い。それが僻みや嫉みである事くらい、女だから分かるもの。 それでも大河さんは周りの視線に臆することなく、私の背中へと腕を回した。
そしてこのパーティーで世界で一番惨めな事件は起こった。
大河さんが会社の取引先である社長に挨拶に行って、その輪の中には何故か朝比奈も加わっていた。