【完】傷だらけのプロポーズ
真澄ちゃんがその輪をすり抜けて私の方へやって来た。 先ほど遠くから頭を下げただけで、今日話は一切していない。
彼女はこんな華やかなパーティーの中でも臆する事はなく、ある意味肝の据わっている女性だった。 5歳以上も歳の離れている女の子なのに、自分が情けない。
「小田切さーん、まさか小田切さんに会えるとは嬉しいです」
人懐っこい瞳を見せて、私へと纏わりついてくる彼女。 アハハ、と愛想笑いしながらそれを受け流す。
「私もビックリ…。朝比奈と真澄ちゃんがいるなんて…」
「朝比奈さんに誘われたんですー…!結城社長のパーティーなんてドッキドキで緊張しちゃうけど、すっごく楽しい!」
この場に来てすっごく楽しいと言えるのも才能だと思う。 私は居心地が悪くて仕方がない。
大河さんと一緒に居るお陰で変に注目はされてしまうし、そもそも一般人だからこういう世界は慣れない。 堂々と振舞える年下の女の子を羨ましく思う。
今はこの呑気な女の子が一緒に居てくれるお陰で、少しだけ救われる。 けれど、事件は真澄ちゃんと話をしている最中に起こった。