【完】傷だらけのプロポーズ
「…!!」
「あら、ごめんなさい。 かかっちゃったあ…?」
さっきまで大河さんと話していたモデル連中が数人、私達の所へやってきて、彼女の手に持っていたグラスが私の顔へとぶちまけられた。
口がポカンと空いて、一瞬何が起こったか分からなかった。 中に入っていたシャンパンが、私の顔をびしょびしょに濡らしていく。
周囲が少しだけざわついた。 声を上げたのは真澄ちゃんだった。
「何するんですか?!今のわざとでしょ?!」
クスクスといやらしく笑みを浮かべる数人の女性。 真澄ちゃんは怯むことなく、彼女達へと噛みついた。
「嫌だあ、人聞きが悪い。 手が滑っちゃっただけでしょう?」
「そうよねぇ?わざとする訳ないじゃない。 本当にごめんなさい。」
「何なの、あなた達。マジでムカつくんだけど」
…喧嘩をする場じゃないでしょう。 そう言いたかったけれど、頭はもうパニック状態だ。
一刻も早くここから抜け出したい。そう思っているのにその場で立ちすくみ足が動かない。 早く、早く、この場から…。メイクが落ちてしまう。 思えば思う程、膝がかくかくと震えた。