【完】傷だらけのプロポーズ

「ねぇ、あなた大河さんの彼女って本当なの? 全然似合っていなくてびっくりしたわ。」

「ちょっと、関係なくないですか?それとも僻み?自分が副社長の彼女になれないからって。
そんな嫉妬みっともない!いい歳をした女が」

真澄ちゃんは怯むことなく、彼女達の顔へと自分の持っていたグラスを投げつけた。
すると真澄ちゃんは髪を掴まれて、取っ組み合いが始まる。

それに巻き込まれて、一人の女性が頭から私へと水を掛けると、床まで滴る程水浸しになってしまう。

思わず頬を流れる水を強く拭った後に、直ぐに’マズイ’と気が付いた。

魔法が溶けていく瞬間を、身に染みて感じた。

「ちょっと、あなた達…!一体何を騒いでいるのよッ!
美麻さん、だいじょう…ぶ…」

結城社長と大河さんが駆けつけて、私の顔を見た瞬間言葉を失う。

膝が折れ曲がって、その場でぺたりと崩れ落ちていく。 全てがスローモーションに見えた。 

遠くの鏡に映る自分の姿。 頬を流れる水を拭った先にうっすらと見えた赤いあざ。 ――本当の醜い自分。

結城社長が眼を大きく見開き、そのあざに注視する。 そして、後ろに居た大河さんの私へと伸ばす手が躊躇っていた事。

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