【完】傷だらけのプロポーズ
彼女はその赤いあざを醜いと言う。 けれど、俺にはそのあざさえ美麻の一部であるのが当たり前だったから、全然気にならなかったんだ。
寧ろそのあざ丸ごと、美麻が好きだった。
心の傷跡ごと全てを包んであげたかった。
「でもさあ、お母さんを恨んだって仕方がないし。
昔、お父さんとお母さんが二人で話しているの聞いた事があるの。
うちのお母さんってすっごく能天気でお調子者じゃない。 だから小さな時から顔のあざ位気にしないのって私には言ってたくせに、私のせいであの子にあんなに辛い想いさせてって私の居ない所で泣いてるの。
誰のせいでもないって分かってるのに…」
「うんうん、おばちゃんはそういう人だよなあ。」
「お母さんの気持ちも分かってたし、恥ずかしい事じゃないってのも分かってた…。
私の他にも生まれつき同じ病気の人がいて、それを受け入れてる人だって沢山いる。
だけど、私はこんな歳になるまでこのあざを…自分を受け入れることが出来なかった。
綺麗な肌を持っている人が羨ましくって、素顔を人に見せられるのが悔しかった。」