【完】傷だらけのプロポーズ
出しかけた右手を引っ込めて、視線を逸らしながら言った。
「優しいとかそういうんじゃねーよ。15年も一緒にいんだ。 そいつの容姿やうんぬんを気にした事はない」
「でも…客観的に見たら気持ち悪いし、不気味だよね…
だって見た?結城社長も大河さんも…このあざを見て引いてた…」
「俺は…!何度も言うようだけど、お前の顔のあざを気持ち悪いなんて思った事は一度もない…!
迷子になってもすぐに見つけやすいし、何よりもそれもお前の個性だって思ってる!
馬鹿みてぇな事ばっか考えるな…!」
「…やっぱり優しいんだ、朝比奈は…。 だって昔からそうだったよね。 私が一番言われて嫌な事を絶対言わないでいてくれて…
口が悪いけど、朝比奈がすごく優しいのは知ってたもん」
なら、俺にしておけば?
お前が気にしている顔のあざごと全部お前を受け入れるし、愛している。
答えは簡単だ。 けれどこんな簡単な回答を15年間も伝えられずに居る。