【完】傷だらけのプロポーズ

確かに、真澄は思っていた以上に気の良い女性だったらしい。 あの取っ組み合いの喧嘩は正直驚いた。

すごく良い子だと思う。

パーティーに参加したけれど物怖じ一つすることなく、社交的に振舞ってくれて、可愛いのに親しみやすくて

そして美麻の事を庇ってくれた、正義感のある子だ。 だからこそ、もう中途半端な態度は止めたいと思う。

「朝比奈の彼女なのに…悪い事しちゃったよ…」

「いや、彼女じゃねーし」

「え?」

「別に付き合ってもいないし、付き合う気もないってか」

「…何それ」

「色々とあるんだよ。とにかく俺と真澄ちゃんはお前が思っているような関係ではねーから。
そんな事よりお前はきちんと結城大河と話をすべきだ。 きっと受け入れてくれるさ。
お前はお前のままでいい…」

美麻が不思議そうな顔をし、目を丸くする。
ふいっと顔を背けて、言葉を選ぶように説明をした。
ただただ’美麻が好きだ’と言えれば終わる話なのに


俺は15年間、美麻との今の関係を終わらせたくなくて
ずっと一緒に居たくて、この気持ちを伝えずにいた。

きっと今日も言えない。  結城大河の所になんて行くな。俺の側に居ろ。 そんな物語のヒーローのような台詞も言えない。

物語のヒーローになれないのならば、大好きな君の幸せだけは願いたい。

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