【完】傷だらけのプロポーズ
「言いたい事は分かります。 あんな決定的な場面を見てしつこくする程諦めの悪い女ではないですから。
朝比奈さんは、本当に小田切さんの事が好きなんですね…。 惚れ直しちゃって、羨ましくなるほどかっこよかったですもん…」
「ごめんな…。」
謝る事しか出来ない。 それでも彼女は毅然とした態度をして、笑顔を崩さなかった。
「俺、真澄ちゃんの事少し誤解してた。 男とか恋の事しか考えていないような頭の軽い女なのかなーって思って…」
「いや、それは誤解でもないと思うけど…。 事実私が朝比奈さんに近づいた理由も仕事が出来てかっこよかったからだし。」
「…真澄ちゃんが思っているような男じゃないよ、俺は…」
「確かにそうかもしれないですね。本当は小田切さんの事大好きなくせに、本人を目の前にしたら意地悪しか出来ないんだもん。
まるで子供みたい…。
でもきっとそれが朝比奈さんの本当の姿なんでしょうね…。
いいなあ…朝比奈さんにそこまで想われる小田切さんが羨ましい。本物って感じですよね。
それに、小田切さんの顔の事はびっくりしちゃって。 きっと小田切さんに嫌な気持ちさせちゃったと思う」
少しだけ笑顔が曇った彼女は、遠慮がちに口を開く。