【完】傷だらけのプロポーズ
朝比奈は特別な存在だった。ずっとずっと。 朝比奈が居ない人生なんて考えられない。 そうやって依存してしまっていた。
でもそれは本当にただの依存だけだったのだろうか。
ずっと一緒に居て空気みたいに側にいてくれた。 朝比奈に彼女が出来た日は悲しくなってしまって、寂しく思っていた。
いつかは朝比奈も誰かと結婚して、私の側には居てくれなくなる。 そんな日が来るのがずっと怖かった。
その本当の気持ちに、気づいていたのにずっと気づかない振りをしていたのではないだろうか?
「うわあ…」
「はぁー…」
「美麻さん、美麻さんってば…
ねぇねぇ、見て下さい…」
「あー…んー?何-?」
「今いらっしゃったお客様なんですけどぉ…。 可哀想ですねぇ」
佐江ちゃんの少しだけ沈んだ声色に、顔を上げる。LILI BULEの店舗の入り口には、リップコーナーがある。 一番売り上げを上げていて、目立つフロアだ。
そこに男女のカップルが一組。 そのカップルを見て、ドクンと心臓が飛び跳ねた。
一見何の変哲も無い普通の20代後半のカップルのようだった。 しかし彼女の首から頬にかけては赤い大きなあざがあった。 私よりもずっと大きく目立つあざだ。