【完】傷だらけのプロポーズ

「あれって生まれつきでしょうかね?私、直視する自信ありません…。」

「私、行くわ」

スッと立ち上がり、そのカップルの元へとゆっくりと歩いていく。
胸がドキドキしていた。それを取り繕うように笑顔を作る。

「何かお探しでしょうか?」

そう問いかけると、彼女の方がにっこりと穏やかな笑顔を見せた。

「リップを探してるんです。沢山あってどれにしようか迷っちゃって」

「今はマットリップが人気ありますよ。 こちらのシリーズなんて、すごく人気で。
もしよろしかったら気になる物がありましたらタッチアップしますよ」

「本当ですかあ? 嬉しいなあ。 ねぇ、どの色がいいと思う?」

佐江ちゃんのいうように、傍から見れば彼女は’可哀想’なんだろう。
でも何故だろう。

首元から頬にまで渡るあざを彼女は隠そうともしていない。 それどころか、堂々と胸を張っているようにも思える。

甘えた声を出した彼女を見守る彼氏さんはもっと優しい顔をしていた。 その顔は、スッピンの私を見つめる朝比奈と重なる。

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