【完】傷だらけのプロポーズ

タッチアップをする為に椅子に座らせて、お勧めのリップを何本か並べる。
唇にそれを乗せる度に、彼女は幸せそうに笑い、隣にいた彼氏にそれを見せる。

私には出来ない。自分のあざを隠さずに、堂々と振舞う事なんて。 私よりもずっと大きなあざ。 彼女は自分の顔のあざとどうやって向き合ったんだろう。

「とてもお似合いですよ。」

「ありがとうございます。ん~~、すっごく迷う。 こっちの色も可愛いし、これもいいし。
どうしよっかなあ」

「ピンクの方が似合うと思うよ」

傍から見れば微笑ましいカップルの光景だった。 思わず心がほっこりしてしまうほど。

化粧品カウンターに男性が居るのは珍しい光景だ。 こうやって一緒に真剣に選んでくれる男性も珍しい。 女性のメイク用品には興味のない男性が大半だからだ。

何て良い彼氏さんなんだろう。

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