【完】傷だらけのプロポーズ
二人を微笑ましく見つめていると、彼女は顔を上げてこちらを見上げた。 曇りなき笑顔が眩しかった。 私はきちんと笑えていたのだろうか。
「優しい彼氏さんですね、羨ましい」
「えへへ、自慢の彼氏です。今年の春に入籍をして、旦那さんになるんですけど」
「まあ、それはおめでとうございます…!」
素直にそう言うと、二人は顔を見合わせて微笑んだ。 その笑顔を見れば分かる。幸せだって事くらい。
「今度結婚式を挙げるんですけど、式場のメイクさんを結構悩ませちゃって。
ほら、私の左側の顔首から頬にかけて大きなあざがあるから」
彼女は実にけろりと言って退けた。 自分の顔が思わず引きつったのが分かる。
同情されて可哀想って言われるのが一番堪える事くらい、同じあざを持つ人間として分かっていたのに。
「俺は別にそのまんまでいーって言ってるんですけどね。 それも個性だし」
「もぉー…分かってないなあ。一生に一度くらい綺麗な姿でウェディングドレス着たいのー
本当に女心分かってないんだからー」