【完】傷だらけのプロポーズ
「何だよそれー。俺はそのままの状態が一番綺麗って言ってるのに」
こちらが照れくさくなってしまうほど、甘い会話だ。 でも幸せな事だと思う。そのままの状態が一番綺麗だと言って貰える存在がこの世に居る事は。
「でも大きなあざだから、メイクさんも困らせちゃって申し訳ないです。
隠そうとしたらどーしても厚塗りに見えちゃうだろーしなあ。
お姉さんみたいに綺麗な肌だったらいいんですけどね」
彼女の言葉に、ぎゅっと胸が押し付けられそうになる。 だからこの時、自分がどうしてそんな行動を取ったのかは分からなかった。
シートタイプのメイク落としを手にして、自分の右頬に充てる。 そして思いっきりそれを拭った。
鏡の中に露わになるのは、私の右頬に生まれた時からある赤いあざ。 大嫌いだった醜い姿。 それを朝比奈以外の誰かに見せたのは、いつぶりだったんだろう。
「厚塗りに見えないように隠す方法はいくらでもありますよ。 私で良かったら教えます…!
一生に一度のウェディングドレスですものね、誰だって綺麗でありたいと思うものです。
その為に、この世にメイクがあります」