【完】傷だらけのプロポーズ
帰って来て早々朝比奈が遠慮なく家に上がり込む事もそうだけど…
あの副社長と消えちゃった事。目撃していた数人の社員から話が広まって、休日明けすごい噂になってそう。
そう考えると憂鬱だった。 わざとらしく大きなため息を吐いて、ソファーに座る朝比奈を恨めしそうに睨みつけると彼は立ち上がってキッチンまで向かう。
「そんな事だろうと思って、美麻の分まで餃子作って置いたんだ。
よし、冷凍ご飯はあるな。これをレンジでチンしてっと。
ちょっと餃子取りに行ってくる。
ご飯の準備が終わるまで、君はスキンケアをしときなさい。 もう肌も曲がりに曲がって大変なんだから、放っておくと皺くちゃのババアになっちまうぜ?」
「失礼な奴!」
軽口を叩き、軽薄な笑みを浮かべながら朝比奈は自分の家へ一旦帰る。
私達は、不思議な関係。 周りからはよく付き合っているの?と言われ続けた。 けれど出会って15年以上、私と朝比奈の間に恋愛といった関係は一切ない。
朝比奈に彼女が居たこともあるし、私に彼氏が居た時もある。 それでも常に一番近くに居続けてくれた異性は朝比奈だった。