【完】傷だらけのプロポーズ

彼女の大きな瞳が一瞬瞬いて、そしてすぐに笑顔になった。

メイクは魔法。
女性を美しく魅せるもの。

何度も助けられた。自分に自信を持たせてくれた。

大嫌いな自分を少しだけ認められる日があった。 でもふと一人きりになって鏡を見つめると、決して消える事のないあざは自分自身を責めているみたいだった。

そんな時、助けてくれたのはいつだって朝比奈の存在だったんだ。



「メイクをなさる前にたっぷりと化粧水と乳液でお肌を保湿します。 そうする事によって、後のメイク乗りは全然違って見えます。
下地を塗った後に全体的にリキッドファンデーションを乗せて、水分のたっぷり含んだスポンジで余計なファンデーションを取ります」

不思議な気分だった。 自分のあざを他人に見せながらメイクをする事。
彼女の温かな頬に指を滑らすたびに、段々と頬が緩んでいく。

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