【完】傷だらけのプロポーズ
お店を出てから笑い合って互いの顔を見つめる二人に、どこか既視感。
どうして気が付かない振りが出来たのだろうか。
私だってずっと救われてきた事。 朝比奈がいつも私の顔のあざを何でもなかったかのように振る舞い、心の傷跡に触れずに居てくれた事。
だから朝比奈の前でだけ、素顔の自分で居る事が怖くなかった。 ずっと一緒に居て欲しいと思った、その気持ちは…。
「…美麻さん…」
二人を見送った後、佐江ちゃんが気まずそうにこちらへ寄って来る。
「佐江ちゃん、ごめん。 BAとしてこんな顔でフロアに居るのは失格だよね。 私、ちょっとお化粧直ししてくるから。
ごめんね、驚かせちゃって。 私って実はこんななの。今まで隠してきたけど、これが本当の私なの…。本当はお肌も全然綺麗じゃない…」
「…違うんです…」
ぎゅっと佐江ちゃんが私の制服の裾を掴み引き止める。 その瞳には涙がいっぱい溜まっていた。