【完】傷だらけのプロポーズ
佐江ちゃんから受け取った優しい気持ちは、どこか懐かしい。 そうだ、この優しさはいつだって側にあったからだ。
15年間、一度たりとも絶やさずに側にあった優しい気持ち。 心に灯り続けたもの。 それは朝比奈がずっとくれ続けた優しさそのものだった。
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「大河さんときちんと話をしてくるッ!」
「ふぇ…?!」
ボサボサの髪をして、部屋着を着たまま玄関に出て来た朝比奈はまだ寝ぼけ眼だった。 大きな瞳をぱちくりと瞬かせて、焦った表情になる。
「朝比奈、今までありがとう…」
「何だよ、朝っぱらから…。
本当にお前何だよ…。俺は今日は休日で寝てたんだ。
それをインターホンを何度も押して、終いにはドアを何度も叩きやがってどうして俺の安眠を邪魔すんだ」