【完】傷だらけのプロポーズ
彼と出会い、彼の良い所を沢山知った。
結城社長の息子で、LILI BULEの副社長。 けれど、飾った所がなくってどこか庶民的。 柔らかい空気を持っていて、大人なのに子供のように笑う人。
思っていたよりずっと一途で、思ってたよりずっと愛情深い人。
甘えていたんだ。
本当の自分を晒す努力は怠るくせに、そこにある愛情ばかり欲しがった。
皆が羨ましがる大河さんと付き合って、いつか結婚出来たら誰もが欲しがる幸せを手に入れられる。
他人の手から貰う幸せばかり考えているから、目の前がくすんでいくんだ。
彼の手をそっと離して、真っ直ぐに見上げるとダークブラウンの瞳が柔らかく揺れる。 どうか勇気を貸して。
「大河さんに、本当の私を見て欲しくて」
「美麻ちゃん…?」
バックの中に忍ばせていたシートタイプのメイク落としを手に取って、メイクをしている肌に滑らせていく。
ごくりと唾を呑み込む音が、静まり返った室内に響く。 戸惑っていたのは、彼の方だ。私はとっくに覚悟を決めていた。