【完】傷だらけのプロポーズ

昔から私をディスって罵るのが大好きな朝比奈。 人前では品行方正に紳士ぶって、母からの評価も高い。

そして私は、朝比奈がどれだけ口が悪くとも、本当はとても優しい人間だと知っている。 先ほどのように、眉毛がないだの、顔が浮腫んでいるだの、ブスだと失礼な言葉をいつだって言ってくる癖に

出会って15年、朝比奈は私が一番気にしている事は絶対口にしない。


化粧水と乳液を並べて、スチーム美顔器の電源を入れる。
霧状になった細かなミストが空気中を舞っている。

鏡をテーブルに置いて、ゆっくりと化粧水を肌へ塗り込んでいく。 毎日うんざりと見ている顔のはずなのにため息は止まらない。


どうしてこの顔に生まれてしまったのか。


私の顔の右側、頬の辺りには生まれつき500円玉大のおうとつのない赤いあざがある。

命に関わる病気ではないが、放っておいて自然治癒するような病気でもない。

だから28年間このあざと共に生きていた。 そして28年も付き合ってきているのに、まだこの赤あざと自分の気持ちの折り合いはついていない。

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