【完】傷だらけのプロポーズ
深々と頭を下げると、大河さんは言葉を失った。
大丈夫だ。涙はもう出ない。
期待していた言葉と返ってきた言葉が違ったとしても、もう人に期待をかけるだけの生き方はしたくない。
右頬を自分の手のひらで包み込むと、ほんのりと温かい。 自分の醜ささえも受け入れて貰いたいと願っていた。 …でもそんなもの、とっくに受け入れて貰っていたんだ。
「私、もう大河さんとは付き合えない」
「美麻ちゃん…?」
「嘘をついて自分を着飾っていたっていつかボロが出ちゃう日が来るのにね…。
でもね、大河さん私この顔のあざが嫌で嫌でしようがなかったけれど、本当はこのあざごと自分を愛してあげたかった。
嫌な気持ちと同じくらい、愛してあげたい気持ちが強かった。そのまんまの自分を抱きしめてあげたかった。 だって自分が世界でたった一人しかいない自分を愛してあげれなくちゃ、人の事なんて愛せないよ。」
「…俺は、そのままの美麻ちゃんでもいいと思う。 でもそのあざを気にして、美麻ちゃんが不安な気持ちになる日が来るならそれを取り除いてあげたいと思って…」
そこまで言って、大河さんはハッと顔を上げる。
乾いた笑いを宙へと浮かべる。