【完】傷だらけのプロポーズ

「自分の気持ちに素直になって、大切な人に正直な想いを伝える事。
それを守れないなら、俺と別れるなんて許さないんだから」

「大河さん…」

「美麻ちゃんが想いを伝えなくちゃいけない人、ちゃんと居るでしょう?行きな」

結ばれた小指に、強く背中を押された気がした。 笑いかけた先に、光りの道が見えた気がして。

温かい気持ちで胸いっぱい満たし、また歩いて行ける。
素顔の自分を曝け出した後に、素直な自分の想いが透けて見えた。
ずっと誤魔化し続けて来た気持ちと今ようやく向き合える。


―――――

「もしもーし?もしもーし、どうしたー? 美麻今日、仕事?え?なーに?聴こえなーい」

「ねぇ、奈子。 私さずっと本当は朝比奈の事が好きだったんだよ」

大河さんの家からの帰り道。 平日の午前中の人通りの道を、私は素顔のまま歩いていた。
振り返って私の顔を見る人も居れば、何事もなかったかのように通り過ぎていく人も居た。

同情されても、可哀想だと思われても、もう気にはならなかった。 世界中から笑われても、今ならそれを笑い飛ばせる。

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