【完】傷だらけのプロポーズ
「私の気持ちを奈子に聞いて欲しかっただけ」
はぁーと大きなため息が電話口から漏れる。
「それは私に言うんじゃなくて夏樹に言いなさいよ」
「そんなの、分かってるもん。今から朝比奈に会いに行くッ!」
「会いに行くって、お隣同士じゃん。あんたら。つーかこんな朝っぱらからふらふらどこに行ってんのよ、あんたは」
「…ふらふらしていたら15年も経っちゃってた…」
「はぁ?」
「ごめん!奈子、切るね!また連絡する!」
「って、ちょっと…!用件は一体何だったのよ?! 美麻?みあ――」
初めて朝比奈と会った13歳の春の事を思い返していた。
『お前、目が出目金みたいにでっかくて気持ちが悪い』 朝比奈は、15年経った今でも何も変わらない。
変わらないでいてくれた事に感謝を伝えたい。
出会ったあの日から、私にとって朝比奈はどれだけ特別な人だったか、改めてきちんと伝えたい。
自分を曝け出した世界は、視界が広がって何でもありの世界へと変わっていく。
醜いものも綺麗なものも全てを受け入れて、あるがままの自分を愛する。
どんな時でも一番に支えてくれていたのが誰かなんて、ずっと知っていた。