【完】傷だらけのプロポーズ
ぷつりと電話が切れて、取り残される部屋の中。
テーブルの上にぽつんと置かれた結婚指輪を見つめると、静寂に静まった部屋の中がちゃりと鍵の開く音が聴こえた。
何度こうやって同じ事を繰り返してきたのだろう。 それは長すぎる程俺の元へ舞い落ちた初恋。
結婚指輪の箱を握り締め、立ち上がり玄関まで走る。
玄関のドアを開こうとすると外側から開いたらしく、その場ですっ転びそうになる。 つま先で何とか踏みとどまり顔を上げると、そこには目を真ん丸にした美麻が立っていた。
「何やってんの…」 それはこっちの台詞だ。 いや、今はもうそんな事はどうでもいい。
きょとんとこちらを見つめる美麻は、何故かすっぴんだ。 すっぴんというか、いつも出掛ける時は必ず隠している頬のあざが露わになっている。
出会った頃を思い出す。
隣の席。 背筋を伸ばして椅子に腰をおろし、すました顔をしていた。
真っ白い肌にはひと際目立つ赤いあざが頬にあった。 ちらりとこちらを見つめた視線。 大きな瞳に整った顔立ちで、直ぐにそれに目が奪われて頬のあざは全然気にならなかった。
当時から素直じゃなかった俺は、彼女に見つめられて口を出た言葉はコレだ。