【完】傷だらけのプロポーズ

「…朝比奈、本当にどうしちゃったの?何かあったの…?あんたが泣くなんて…」

傍から見れば、なんて情けない男だったんだろう。 それでも涙は止まらない。
情けなくなるほど、君が好きなんだ。

涙声、言葉が上手く出てこなくてゆっくりと美麻の左手を手に取ると、持っていた結婚指輪を差し出す。

ゆっくりと薬指に指輪をはめる指先が震えている。 「え?え?」と美麻は間抜けな声を出して戸惑っていた。

美麻の指にはめられた指輪は、ぴったりだった。 お前が酔っぱらっている時に密かにサイズを測っていたなんて、バレてしまったら馬鹿にされてしまうだろう。

若干自分でもストーカー行為に引いている所だ。 シンプルにかたどられたプラチナの輪っかの中央で、小さなダイヤが光っている。

「朝比奈、これって…」

情けなくても、もういいと思った。 意識はしなくともこの15年の間で、何度君に情けない姿を見せてきたのだろう。

今更恰好つけたって仕方がないじゃないか。 君はきっと知っている。俺が周りから言われるほど、出来た男じゃない事を。

「一生誰にも愛されない可哀想なお前に…世界中で一番の幸福を俺がやるよ…。 この俺の側に永遠に居る権利をお前にあげる」

てっきり馬鹿にされるか笑われるかと思ったけれど、ジッと指輪を見つめる美麻の瞳には俺とお揃いの涙がいっぱいに溜まっていく。

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