【完】傷だらけのプロポーズ
15「健やかなるときも、病めるときも。」
15「健やかなるときも、病めるときも。」
そんなこんなで私達は交際0日で入籍をした。 両家の母親に報告した後、朝比奈がやって来たのは市役所だった。
若干展開が速すぎてついていけないが、朝比奈いわく早すぎる事はないらしい。 15年も一緒に居たのだ。それもそうかなあ、と思う。
あれよこれよと話は進み、一緒に暮らす新居。結婚式の事まで流れる時間のスピードに頭はついていかない。 それでもあの日から私の左手の薬指には朝比奈のくれた結婚指輪がキラキラと光っている。
「美麻、今日は実家に帰るんだろう?」
「うん。最近お父さんが帰って来いってうるさいからー…。
お父さん何も言わなかったけれど、娘がお嫁に行くのは寂しいみたいね。 朝比奈、夕ご飯大丈夫?」
「何を妻らしく心配したふりしてやがる。 夕ご飯の用意をするのは俺の方が多いだろうが」
あの日から、私と朝比奈の苗字は一緒になった。 それはとても不思議な気持ちだ。
私も朝比奈さんなのに、未だに朝比奈を名前で呼ぶことは出来ない。 改めて15年間染みついた習性とは恐ろしいものである。
まあ、名前なんてただの飾りだ。 分かち合う物が少し増えただけで、私達の生活は余り変わりはない。