【完】傷だらけのプロポーズ

朝比奈には、感謝している。
醜い素顔を前にして、当たり前のように普通に接してくれる事。

本当は嫌で嫌でたまらないこのコンプレックスだけを、あえて口出さない事。

私の気持ちを本当は知っている事。 知っていて絶対に私が傷つく言葉だけは口にしない。


けれど、朝比奈が受け入れてくれるこの赤いあざをまだ自分自身でも受け入れていない。 だからこそ、誰にも言えなかった。

気持ち悪い。醜い。汚い。 メイクをしていない自分を鏡で見るのが大嫌いだった。
このあざさえなければ、普通の女の子のように恋愛をして普通に結婚も出来たのに。

自分で自分を受け入れられない。 だからファンデーションやコンシーラーで隠して、人前では見えないようにしてきた。

たとえ見えなくなったとしても、消えるものではなかったのに。


「この餃子美味しい!」

「だろう?俺ってやっぱり天才だよな? 料理も上手いし、イケメンで優しいし最高」

「そういう事普通自分で言う?」

「その上仕事も出来るとか、こんな完璧な男ってそうそういないよなあ」

「あんたには呆れるわ…よくそれだけ自信家でいられるわよ」

「そりゃあ、自分を愛せない人間が人を愛する事は出来ないからね」

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