【完】傷だらけのプロポーズ

朝比奈の名前を佐江ちゃんの前で出したのは悪手だったか。

再びにまにま悪戯な笑みを浮かべながら「やっぱり朝比奈さんかあ~」と納得したように言う。

「朝比奈さんってすっごく遊んでるけど、本命は美麻さんですものね」

「それこそ誤解…!」

LILI BULEの副社長である結城大河はそりゃあ女子社員から注目の的だったけれど、朝比奈も負けず劣らずだ。

若くして東日百貨店の営業マンから外商まで成りあがった男だ。 どうしたってモテてしまう。 そして普段の朝比奈は人当りがとても良く誰にでも優しいのだ。

意地悪な顔を見せるのは私の前だけだから、周囲の女性があの外面に騙されるのも仕方がないと思う。

「中学からずっと一緒なんですもんね。同棲とか憧れる!」

「だから同棲じゃないってば…! お隣さん!
それに朝比奈、彼女いるよ。」

「えー、それってゆりあちゃんの事でしょう~?それなら振られたって私聞きましたよぉ? だからなんだかんだ言って、朝比奈さんの本命って美麻さんって噂が昔からありますよね」

「ありえないってば、あ!お客さんだ!接客接客」

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