【完】傷だらけのプロポーズ
「すいません。 小田切さん休憩入っていいですか?」
くるりと彼がレジカウンターに視線を向ける。
佐江ちゃんと共に出勤している女子社員は揃ってやって来て「勿論です!」と1オクターブ高い声を上げる。
どうして?!
何で私の休憩時間勝手に決めちゃうの?!
今日は私より佐江ちゃんの方が先に出勤をしている。それを考えれば彼女の方が休憩を取るのは先だ。
けれどその佐江ちゃんも結城大河に向かって「どうぞどうぞ」と頬を赤らめながら言って、私に向かってウィンクまでしてくる。
…頭が痛い。
「どうやら許しは得たようだ。 ランチ行こう。美味しいお店知ってるんだ。 」
「は?へ?」
一切悪びれる事なく、子供のような無邪気な笑顔を浮かべた結城大河は無理やり私の腕を掴んだ。
嫌だ!もう余計な噂は立てられたくない。注目の的にもなりたくない。
彼とは、これ以上関わりたくないと思ったばかりだったのに。