【完】傷だらけのプロポーズ

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てっきり百貨店内のレストラン街に行くのかと思いきや、彼が連れて行ったお店は外に出て路地裏に入って行った小さなパン屋さんだった。

お世辞にも綺麗な今どきのお店とはいえない。けれど焼き立てのパンの良い匂いで店内いっぱい包まれている。

「大河くん、いらっしゃい。 今ちょうどメロンパンが焼きあがるよ」

彼の名前を呼んだレジ前に立つ少し年配の女性とは顔見知りらしい。
結城大河はにこにこと人懐っこい笑顔を彼女に見せて、楽しそうに談笑している。

…意外。こういう昔ながらのパン屋に来るなんて。

結城社長の息子で、お坊ちゃま育ちのはず。 高そうなスーツをさらりと着こなす彼とお店は余り釣り合いが取れていない。

「今日は綺麗な女性を連れちゃって」

ほんわかとした女性の笑顔を前に、思わず作り笑いを浮かべる。

「美麻ちゃん、メロンパン好き?」

「み、美麻ちゃんって…
メロンパン、好きですけど」

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