【完】傷だらけのプロポーズ

美容業界の闇。
うちの店舗はまだ人間関係は良い方だ。でもよく別の店舗では聞く話。

女だらけの社会で、美を取り扱う仕事をしている。 女性ばかりが集まっている世界で、争いが起きないはずがない。

この仕事が好きだ。 だから余計なやっかみや嫉妬は避けたい。 


私の言葉に、彼は怪訝そうに眉をひそめる。

「自分の立場は重々自覚している。 とはいえ、何が立場だ。 俺だって君と同じ人間だ」

「あなたと私では住む世界が違い過ぎます」

「あはは、面白い事を言うなあ。 同じ日本に暮らしている。住む世界が違うって事はないだろう」

「それでも違います! あなたはLILI BULEの副社長なんですよ?
結城社長の息子です。たかが社員とは全然世界が違うのは当たり前の事です」

「俺の母親も元は普通の美容部員だった。 だから別に俺だって生まれながらのお金持ちって訳じゃない。
それどころかシングルマザーに育てられた子供だ。幼い頃は普通よりもずっと苦労ばかりした」

「それは…」


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