【完】傷だらけのプロポーズ

美しく着飾った人々の中で、自分だけがどうしても異質に見えて、ビールに入っているグラスに口をつけて時間を止める。

見る物全てが煌びやかで美しく、少しだけ目が眩んだ。

「美麻さん、お料理取って来ましょう。 それにしてもすごいご馳走。 結城社長相変わらずやる事が派手ですよね~」

「私ちょっとお手洗いに行ってくる」

「そうですかー?じゃあ私美麻さんの分も取ってきちゃいます!」

騒がしいパーティーを抜け出して、一人化粧室へやって来る。

ピカピカに磨き上げられたホテル内の化粧室の鏡にはやけに冴えない自分の姿が映し出された。 …その姿を見たら落ち込む。

今日もお昼は普通に仕事だった。もう28歳。一日中メイクをしていると、午後にはすっかり肌がくすんでくる。

パーティーに来る前に化粧直しはしてきたはずなのに。 二年前にボーナスで買ったちょっと良い所ブランドのワンピースもくすんで見える。 長い黒髪を整える。

パウダーでくすみやテカりを押さえた後、乾燥しカサカサになってひび割れた唇を覆うように、たっぷりと透明のグロスを塗る。

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