【完】傷だらけのプロポーズ
始めは戸惑っていたと思う。 けれど直ぐにいつも通りの笑顔に戻って『そんなの俺は気にならない』と言ってくれた。
あの日は、本当に嬉しかった。 醜いこのあざを撫でてくれたから。 けれどもその秘密を言って直ぐに後悔するような事件が起きた。
初体験から数日後、お昼の購買はいつもより騒然としていた。
購買のおばちゃんや生徒達の悲鳴が飛び交って、売られていたパンが宙を飛び交う。
その中心では、達也先輩に馬乗りになっている朝比奈が居た。 朝比奈の拳が彼の頬に何度も振り下ろされて、駆けつけた教師たちに止められる。
のちに彼らは数日の停学処分になった。
きっかけは、朝比奈が達也先輩の頭に投げつけたメロンパンだった。 だからメロンパン事件。
突如始まった喧嘩。 まさかその原因が私だったとは夢にも思わなかった。 これものちに現場を目撃した同級生に聞いた話だ。
発端は購買のいつものたまり場で達也先輩が私の事を面白おかしく仲間に話していた事だったそうだ。