【完】傷だらけのプロポーズ

『顔にあんなあざあるなんてドン引きだって、あれじゃあ騙されたのと同じだよ。可愛いと思っていたのに』

そんな事を仲間内で話されていたとは、こっちの方がドン引きだ。

私は一体彼の何を見ていたのだろう。 上辺だけの大好きや可愛いという言葉を信じて、秘密を共有したと思えば面白おかしくバラされて

こんなに惨めな気持ちになったのは生まれて初めてだった。



それから直ぐに達也先輩には別れを告げた。
朝比奈は何も言わなかった。

停学開け、いつも通り私に話を掛けてきて、達也先輩との喧嘩の一件は口を閉ざしたまま。

何度も’ありがとう’とお礼を言おうと思っていた。 だって朝比奈は私の為に達也先輩と喧嘩をして、怒ってくれたのだ。

けれど朝比奈はいつも通りの態度を取り続けていたので、結局お礼を言うタイミングは逃してしまった。 それでも心の中で何度も感謝した。そしてそれと同時に決めたのだ。

もう二度と、私は誰かにこのあざの秘密を明かす事はないだろう、と。

そして28歳になるまで、誰と付き合ってもその秘密を明かす事はなかった。 自分を偽り、隠し続けて生きて来た。

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