【完】傷だらけのプロポーズ

佐江ちゃんの目標は寿退社らしい。
その為に合コンや婚活パーティーに参加している。…まだ若いのに。

けれど当たり前のように将来の夢は’お嫁さん’と言いきれてしまえる彼女は可愛いし、羨ましい。

そしていつかきっとその当たり前の夢をさらりと叶えてしまうのだろう。 当たり前を当たり前と言えない私にとってはやっぱり羨ましいし、少しだけ妬ましい。



週末の百貨店はいつもより華やかに混み合いを見せる。
化粧品フロア自体が混みあっていて、スタッフよりお客さんの方が数倍多い。

そんな時は番号札を配布して、接客の順番を待ってもらう。 私を名指しで指名してくれるお客さんも大勢いるので、結果的に待たせてしまう形になる。

その日も大忙しで、タッチアップ希望のお客様を数組待たせていた。 冬になるにつれて、スキンケア関連の物がよく売れる。 スキンケア用品は一つ一つが高額な物が多いので、売り上げにも大きく関わってくる。


そんな大忙しの休日にも結城大河は店舗に現れて、私に話を掛ける前に店長と何やら話し込んでいた。

そして驚く事に接客を始め出した。

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