【完】傷だらけのプロポーズ
「お客様、こちらへどうぞ」
優雅な身のこなしでお客様を案内すると、ピシッと着こなしたスーツの彼に見とれていた。
その気持ち、分からなくもない。
はたから見ていても、魅力的な男性だ。
自分の接客をしながらも、目や耳は彼の姿を追っている。
昨年、副社長に就任するまで彼は大阪の店舗でBAをしていた。
男性のBAは数も少なく、珍しい。 けれど女性と違って客観的な視点を持つ男性のBAは業界内でも中々人気だったりする。
そして結城大河は大阪の難波店に勤務していた頃、かなり有名なBAだった。 そこはもう、華やかなオーラを身にまとった昔カリスマBAと呼ばれた結城社長譲りだろう。
説得力がある。
彼の端正な横顔を見つめ、思った。
私より年上で男性のはずなのに、肌はシミや吹き出物の一つもない程透き通っていて、綺麗だ。
メイクをしていなくても、そんじょそこらの女性よりよっぽど綺麗な彼が、長い指でお客様の肌にファンデーションを充てて行く。