【完】傷だらけのプロポーズ
「塗り込むというよりかは、叩きこむ事をイメージして。 そうするとムラなく仕上がります。
スポンジで余計なファンデーションを取れば、自然な感じにもなります。
当店のブラシはこちらのリキッドファンデーションの為に作られたものなので、多少値は張りますけど一緒に購入されますと長く使えますしお得ですよ。
ブラシもとても大切なんです。お客様は元々毛穴もなく綺麗な肌をしていますので、より一層美しくなると思いますよ」
プライベートでは見せないような、甘い笑顔を前に彼の進める商品は瞬く間に売れていく。
それにしても魔法のように器用に動く指だ。 あの指でメイクをされたら、とても気持ちが良さそう。 そんな事を思い、ハッと我に返る。
何を考えているの?自分の仕事に集中しなくては。
「この間、小田切さんがお勧めしてくれたファンデーションとても良かったわ。私のお肌に良く合ってたみたい」
「それは、ありがとうございます。」
「新しく出た美容液もすっごく良かったし、でも歳のせいかしらね。肌に艶がなくなっていくのは仕方がないのかしら」