【完】傷だらけのプロポーズ

「それでしたら、新しく出たハイライトでお勧めの物があるんですよ。
サッと塗っただけで顔が一気に華やかになります。 お試しになりますか?」

自分の仕事に集中、集中。
新作のスティックタイプのハイライトを筆に取り、お客様の顔へ乗せていく。
見る見るうちにツヤ感がプラスされ、顔を華やかに見せていく。

「まあ、綺麗ね」

「ええ、ツヤ感や立体感が出ます。
クマやくすみもカバーしてくれる優秀な商品ですよ。頬ではなく、まぶたや唇に乗せても立体感が出て綺麗なんです」

「いいわねぇ、それも頂くわ。 小田切さんがお勧めする物に外れはないんだもの」

「いつもありがとうございます。」

勿論商品を売る事も大切だ。
けれどお客様一人一人の悩みに寄り添いたい。
私がお勧めした商品で喜ばれる事以上に嬉しい事はない。


そんな風に接客をしていると、ふと結城大河と目が合った。 彼はこちらを見つめ、優しく微笑んでいる。

何て優しそうに微笑むのかしら。 直ぐにパッと目を離して、ミラー越しに映ったお客様へと微笑みを落とす。 …びっくりした。突然目が合って、思わずドキドキした。

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