【完】傷だらけのプロポーズ
結局結城大河は、午後の終わりまでお店を手伝ってくれた。
その為、今日は一言も話していない。 少し人が居なくなり落ち着いた店舗内で、店長と彼の話している声が聞こえる。
「副社長、今日はありがとうございました。本当に助かりましたわ。」
「いえいえ、新宿本店は1番売り上げの高い店舗ですので、さすがのお客さんの入りですね。
今日は元々母にヘルプを頼まれていたので、久しぶりに店舗に立つと身が引き締まりますし」
今日は早番だったので、午後17時には上がりだ。
ちょうど店長に上がっていいと言われた時、やっと彼は私に話を掛けてくれた。 …ってこれじゃあ、話を掛けてくれるのを待っていたみたいだ。
「お疲れ様です。」
「お疲れ。 今日はもう上がりなんだ。ちょうど良かった。俺も帰る所だから送って行くよ」
「いえ、結構です。 お疲れ様でした。」
挨拶を済ませサッとその場を立ち去るつもりだったが、店長が余計な事を言い出す。
「あら、小田切さん冷たいの。 最近はよく副社長も顔を見せてくれて、今日はヘルプにまで来てくださったんだから、ちょっとお付き合いしてもいいじゃないの」