【完】傷だらけのプロポーズ
少し派手めな顔だけれど、昔からずっと周囲からは綺麗だともてはやされた。
自分でも自分がブスだとは思わない。 ブスだとは思わないが、自分が酷く醜い生き物であるというのは認識している。
同僚も周りの目も全てを欺いてきた秘密が、私には一つだけある。 誰にも言えないし、この先誰にも言うつもりはない。
それを隠し生きて行くと決めた時結婚は諦めた。 女性ならば普通に掴めるであろう幸せを全て手放して生きる事を決意した。
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「ちょ…止めて下さい…!離して…!」
「ちょっとちょっと…真澄ちゃん…そんなつれない事言わなくたっていいじゃないの。いきなり連絡返してくれなくなって、素っ気ないじゃん」
「本当に困るんです…!止めて下さい…、八田さん」
どうしてこういった男女の修羅場に都合悪く遭遇してしまうのだろう。
化粧室から出ると、フロア内で男性が女性の腕を掴み、言い争いをしている。
男の方は、営業の八田さん。ルックスは悪くないが女癖が悪く、社内では結構有名な男だ。
そして腕を掴まれて泣きそうな顔をしている女性は、河合 真澄。去年新卒でLILI BULEに入社をしてきて、とびっきり可愛いと話題になっていた女の子だった。 確か渋谷店勤務だったはず。