【完】傷だらけのプロポーズ
「返せよッ!」
それを取り上げると、「馬鹿だね、お前は」と呆れながらも奴は言うのだ。
「それよりどうしよう、卓。 もしも美麻が帰って来なかったら…。
だってあいつ顔だけはかっこいいんだぞ? 東日百貨店でも有名なんだ。 女共が言ってた。結城副社長は本当にかっこよくって、しかも一途なんだって。
そんなんぜってー嘘だろ。金もあって容姿も良い男が一途とか…ああいった人種は決まって遊び人に決まってる…!」
「そうとも限らねぇんじゃねぇ。 まあーそんないい男なら遊び人だったって過去もあったかもしれないけど、男も30になれば落ち着いたりするのかもよ。」
「だってお前全然落ち着いてないじゃん!」
「いや、俺は俺だし。 でも俺が女だったらそんな完璧な男に言い寄られたらコロッと気持ちも変わっちゃうかも。
少なくとも15年も一緒にいて恋にならないこじらせ男よりかは数倍も良いな」
「俺のハートを傷つけるなーーーッ。 」
「夏樹って器用なくせに、美麻の事になると途端に不器用になるよな。まあ、見てる分には笑えるけど」