【完】傷だらけのプロポーズ

それにしても本当に可愛い子。 渋谷店の方にかなり可愛い子が入って来たというのは一時期話題になっていた。

ファンデーションなんて塗らなくても透き通ってシミひとつない綺麗な肌に、お人形さんのような可愛らしい顔。 話題になるのも頷ける。そこらの芸能人よりかはよっぽど可愛い子だ。

確か佐江ちゃんが騒いでいた「本当に可愛い子なんですよぉ~」って。


本来であるならば男女の揉め事といった面倒臭い揉め事には関わりたくはなかった。
けれどもしっかりと腕を握られた真澄とばちりと目が合ってしまう。

零れ落ちそうな程大きな黒目がちの瞳が、無言で助けを求めている。 …ここで助けないのも、人としてどうかと。

「離してください…」

彼女の声は徐々に小さく、涙声になっていく。 けれども腕を掴む酔っぱらった男の耳に言葉が届いているようには思えない。

タッと走り出して、八田さんの彼女の腕を掴んでいない方の腕を掴み力いっぱい握りしめた。 驚いたように彼女の腕を解いた彼はこちらへ振り返る。

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