【完】傷だらけのプロポーズ

「へ!少し優しくされたくらいでほだされちゃって惨めだねぇ~」

「はぁ?何?そんなつもりないし。 …でももっとすかしてて嫌な奴かと思ったけど、悪い人ではないみたい…。」

いや、あいつは絶対すかしてて嫌な奴だろう? 結城社長の息子だろう?

結城社長は俺のお得意様で、歳の割にやけに綺麗な美麻の会社の女社長だ。 えらく気に入られて、数年の付き合いだ。

若くして結城大河を出産して、外国人だった旦那とは別れた。 要注意人物だ。 結城社長の自宅に仕事でお邪魔する時はいつもハラハラさせられる。

だってあの人は若い男が好きで、愛人を数人囲っているような女だ。 その息子の結城大河がまともなはずない。 絶対に美麻は騙されているんだ。

「ええ、いいじゃん。金持ちでいいやつなんて付き合ってみれば?」

余計な一言を言った卓をぎろりと睨みつける。 絶対楽しんでいるに違いないんだ。 俺の純粋な恋を弄ぶような真似をしやがって

けれど、美麻が簡単に男と付き合う訳はない。 どこかで高を括っている自分がいて、一番近くにいる男っていう事に胡坐をかいていた。

そんな俺に向かって衝撃的な言葉が降り注いできた。

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