【完】傷だらけのプロポーズ

可愛らしい顔をして、アイドルみたいってもてはやされて誰にでも優しいけれど、私には少しだけ意地悪な所

適当に見せて、影で努力をしている所
料理も出来て、掃除も得意で几帳面な所もある。


実は童顔だと言われるのが嫌な所も、くせ毛な事を気にしている所も

皆が知らない朝比奈を、自分だけが知っていたい。 いつか私以上に朝比奈を知る人が現れて、まだ見ぬその人と朝比奈が時間を重ねていって、少しずつ朝比奈が変わっていっても。

変わらないでいて欲しいなんて、ただの我儘だ。 こんな気持ち、小さな子供が玩具を独り占めしたいような浅はかな感情だ。

―――――

誰とも付き合うつもりはなかったのに。 誰と付き合っても自分の気持ちを明け渡せる日が来ることがないならば、その時間さえ無駄だと思っていた。

頑なだった気持ちが、少しずつほだされていく。 単純な話だ。どれだけ強がっていたって独りは寂しい。老後の事を考えてみても、誰とも寄り添えない人生はどれだけ彩りがないだろうか。

いつか朝比奈も誰かと結婚する。 ずっと一緒に今と変わらない関係でいたいなんて、ただの私の願望に過ぎないのだ。

寒い冬の朝、誰かの温もりがとてつもなく恋しくなる日もある。

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