【完】傷だらけのプロポーズ

1月の終わり、都内の個室高級焼肉屋さんに大河さんと居た。

メニュー表を見ると、普段行く大衆焼き肉屋さんと値段の桁が違う。 思わず目ん玉が飛び出そうになる。 個室内の雰囲気も、店員さんの丁寧な説明も場違いな自分。せめてもっと綺麗な格好をしてくれば良かった…。

黒でシックに統一された室内に、オレンジ色の落ち着いた間接照明が灯る。 高級そうなスーツを身にまとった彼は、子供のような無邪気な瞳を揺らすんだ。

「好きな物でも頼んでよ」

「…値段が怖すぎ。」

ぼそりと呟くと、大河さんは声を上げて笑った。
一体何がおかしいのかは分からない。

「大河さんはこういうお店はよく来るんですか?」

「いや、別にいつも来るわけじゃないよ。 別に焼肉食べ放題のお店とかも好きだし」

「私もそっちの方が落ち着きますが…。何ですか一皿の値段が食べ放題の値段と一緒とか恐ろしすぎるし…
こういうお店慣れてるのかあって思っちゃいます…」

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