【完】傷だらけのプロポーズ

「別に慣れちゃいないよ。けれど気になる女性を喜ばせたいって思うのは男なら当然じゃないか?」

朝比奈に言ったらほだされて馬鹿みたいだねって再び言われそうだ。

あの日、大河さんと一緒に居る所を朝比奈に目撃されて、結局送ってもらう羽目になって、何故か夕ご飯までご馳走になった。

夕ご飯、といっても今日のような高級焼肉店ではなかった。 大河さんが大好きだといった屋台のラーメン屋さんだった。

その時彼から色々な話を聞いた。 自分は別に昔からお金持ちだったわけでもないから、実は庶民染みたお店が好きな事。 物心ついた時には両親が離婚をしていたから温かい家庭に憧れていた事。

5年付き合った彼女とは結婚を考える程真剣な交際だったけれど、浮気されて彼女は浮気相手と結婚してしまった事。


ただのお金持ちのお坊ちゃまで、変わった人なのだと思っていた。 私の知らない所で私を知っていてくれた事。 見た目だけじゃなくって、仕事を頑張っている所を見ていてくれた事。

ほだされちゃって…でも素直に嬉しい。人に好きだと言われるのは、自分を認められているようで。

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