【完】傷だらけのプロポーズ
「私は食べ放題でも十分嬉しいですけどね」
「じゃあ、今度は食べ放題に行こう。 君はよく食べる方だから、そっちの方が遠慮しなくて済みそうだ。
けれどこのお店でも遠慮する必要はない。 俺が君と一緒にご飯食べれるのが嬉しいんだから」
頬杖をつきながら大河さんは私の顔をジッと見つめた。
無邪気な微笑み。 その笑顔に心がほだされてしまっていくのは事実だ。
女の子の喜ぶ言葉を知っているのか、照れる事を一切せずにさらりと言葉を紡ぐ。
「君と一緒にご飯を食べていると楽しい」
「また、そんな事言っちゃって…。大河さんは本当に口が巧いんだから」
「本音だけど?一緒に居たいと思わなければこんなにしつこく誘ったりしない」
不思議な雰囲気を身にまとった彼と一緒に居る時間は、ドキドキしたり嬉しかったり楽しかったのは事実だ。
番号を書かれた紙切れを貰ったけれど、捨てきれなかった事。 掛けるつもりはなかったのに、結局はあの日送って貰った時に連絡先の交換はした。