カフェのイケメン君が私のウソ彼です

好きです

走った。とにかく走った。


周りの人が見られているという実感がないわけではないけれど、そんなことはどうでもよかった。


早く会いたい。


ただその思いに突き動かされて走る。


途中で止まる信号すら煩わしかった。


いつもよりずっと遠くに感じた浩くんの家。
ドアの前で息を整える。


そしてゆっくりチャイムを押した。


息をのんで待つ。


けれど応答がない。もう一度押してみても同じだった。


緊張が解け、体中に入っていた力が抜けてドアにもたれかかる。


そっか。家にいるとは限らないんだ。


浩くんがいると思って走り続けた自分が笑える。
浩くんのことになるとこんなにも周りが見えなくなるらしい。


カバンからスマホを取り出して浩くんに電話をかける。
呼び出し音だけがなり続ける。


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